労働条件通知書とは?雇用契約書との違いから注意点まで

企業が労働者を採用する際には、労働者へ労働条件通知書を交付する必要があります。労働条件通知書は、法律によって明示義務事項などの記載内容や交付方法が定められた文書です。そのため通知書発行には、関係法律の知識が欠かせません。

当記事では、労働条件通知書について解説します。発行する目的から交付の際の注意点まで紹介するため、労働条件通知書の交付で不安な点がある経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

1.労働条件通知書とは?

労働条件通知書とは、企業が労働者と労働契約を結ぶ際に、労働条件について明示する書面のことを指します。企業が人を採用する場合には、労働者に対して事前に労働条件を通知しなければなりません。

労働条件通知書に明記すべき内容は、下記の8項目です。

  • ①労働契約の期間
  • ②就業場所
  • ③従事すべき業務内容
  • ④始業及び終業時間
  • ⑤休日
  • ⑥休暇
  • ⑦賃金の計算及び支払い方法
  • ⑧退職に関する事項

雇用者は労働者に対して、条件に沿った労働条件通知書を交付することが必要です。

1-1.発行する目的は?

労働条件通知書の交付は、労働者を保護することを目的としています。労働条件通知書に明示される契約期間や就業時間、賃金などは、労働者が仕事に従事する上で基礎となる事項です。

例えば就業時間が定まっていなければ、労働者はいつ出勤し、どこから残業扱いとなるか知ることができません。また、賃金の計算方法が明らかでないと、労働者は自分の働きに正当な対価が支払われているか判断できないでしょう。

そのため労働基準法では、企業が人を雇用する際に主要な労働条件を労働者に明示することを求めています

労働条件通知書を交付することは、雇用する企業側にもメリットがあります。就業時間や賃金の計算方法などを明記しておくことで、雇用する側と労働者側の間で共通認識を持つことが可能です。双方で労働条件を確認しておけば、勤務における認識の相違は少なくなり、後々のトラブルを回避することができます。

2.労働条件通知書と雇用契約書の違い

雇用契約書は、労働条件通知書と同じく労働者を雇用する際に交付する文書です。どちらも労働者が働く条件について記載する文書であるため、両者の違いがわからない方もいるでしょう。

ここでは、労働条件通知書と雇用契約書の違いについて解説します。相違点を把握し、労働者を雇用する際に役立ててください。

2-1.雇用契約書は必須ではないこと

企業あるいは会社・事業者が労働者と雇用契約を結ぶ際に、雇用契約書の交付は必須ではありません。なぜなら、民法における契約の形式自由の原則に従っているためです。民法第623条では、契約を締結するだけで効力が認められており、雇用契約書を発行しなくても罰則が与えられることはありません。

出典:電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ「民法」

そもそも「雇用契約書」は、企業が労働者を雇用する際に双方で取り交わす契約書のことを指します。企業側と労働者側でそれぞれ1部ずつ作成し、署名・押印することが一般的です。

雇用契約書は、労働条件通知書と比べて、下記のような相違点があります。

  • 書面交付義務がない
  • 雇用契約書は双方で内容を確認し、合意する必要がある
  • 記名押印が必要で、雇用契約書の内容への同意欄がある

上記のように、雇用契約書では内容を労使双方で確認する必要はあっても、書面を交付する義務は発生しません。一般的に、採用内定を通知した時点で雇用契約が締結されたと見なされるため、雇用契約書自体を交付しない企業も多くなっています。

2-2.労働条件通知書は交付が必須であること

雇用契約書と異なる労働条件通知書の特徴は、下記のとおりです。

  • 書面交付義務がある
  • 労働条件通知書は企業側から通知する、一方向の文書である
  • 労働者側で署名や押印をする必要がない

労働条件通知書には、書面交付義務が課されており、労働基準法の第15条では、入社時に労働条件を書面で明示することを求めています。労働条件の明示を怠った場合には、30万円以下の罰金が課されるため、注意が必要です。

出典①:電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ「労働基準法

出典②:電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ「労働基準法

ただし、労働条件通知書は企業からの通知であるため、双方向性の側面では難点があります。そのため、実務の上では「労働条件通知書兼雇用契約書」というタイトルで、署名捺印が必要な労働条件通知書を交付する企業もあります

3.労働条件通知書を発行するときの注意点

労働条件通知書の発行に関しては、労使間のトラブルを防ぐために、さまざまな取り決めがあります。そのため、労働条件通知書を発行する際には、これから紹介するいくつかの点に注意する必要があります。

ここでは、労働条件通知書に記載する事項や保管義務について解説します。また、新たに認められた電磁的方法についても紹介するため、あわせて確認してください。

●絶対的明示事項と相対的明示事項の相違

労働条件通知書に記載する事項には、「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」が存在します。

契約期間や就業場所は、労働条件通知書に明示義務のある絶対的明示事項です。一方、就業規則などに記載がなく自社に存在しない制度については相対的明示事項となり、明示しなくても問題ありません

このほか、安全衛生事項など口頭明示のみで構わない事項もあります。

●雇用形態による記載事項の相違

短時間労働者・派遣社員・有期雇用契約の労働者などを雇用する場合には、雇用形態別に追加で記載する必要があります。例えば、派遣社員には派遣料金などを記載しなければなりません。

また、平成27年4月の法改正により、短時間労働者の労働条件通知書には相談窓口の明示が求められているため、注意してください。

出典:厚生労働省パートタイム労働法のあらまし

●労働条件通知書の保管義務

労働条件通知書は、労働者が退職あるいは死亡した3年後まで保管しておく義務があります。保管期間を確認せずに労働条件通知書を廃棄してしまうと、法律違反に問われかねません。

人事担当者は、保存期間についても十分に注意しておきましょう。

●電磁的方法での通知は労働者の同意が必要

2019年4月1日より、労働条件通知書は電子メールなどの電磁的方法での通知が認められるようになりました。

出典:厚生労働省「労働基準法施⾏規則」 改正のお知らせ

これにより、労働条件通知書の電子化が可能です。ただし、電磁的方法での通知は、労働者の同意・希望が必要となるため、覚えておきましょう。

4.DirectHRを使用すれば労務作業を効率化できる!

ここまで紹介してきたように、労働条件通知書ひとつを取り上げても、人事担当者がこなすべき労務作業は膨大です。

労使間でのトラブルを防止するためには、さまざまな関連法律に注意する必要があります。それぞれの規定を遵守しながら、労務管理や雇用管理、人事管理を行うことは困難です。

膨大で煩雑な労務作業を効率化したい方には、労務管理システム「DirectHR」がおすすめです。DirectHRでは、労働通知書を含む労務作業を大幅に軽減することができます。申請処理をクラウドで一元管理できるため、従業員はスマホやパソコンから気軽に申請可能です。

DirectHRが対応している労務関連の手続きは、入社手続きから、住所・扶養・被保険者区分などの基礎情報手続きまで多岐にわたります。そのため、離職や労災に関する公文書を電子交付することも可能です。>

また、暗号通信など確かな対策が講じられており、セキュリティの面でも安心となっています。

膨大な労務作業で悩んでいる方は、労務管理システム「DirectHR」の導入をぜひ検討してみてください。

5.まとめ

労働条件通知書は、企業が労働者を雇用する際に必要な書面です。労働条件を明示することにより、労働者は労働環境を知ることができ、企業側も後のトラブルを防止することができます。

雇用契約書と異なり、労働条件通知書は法的に交付義務があります。労働条件通知書は、明示するべき事項や保存期間について定めがあるため、交付の際には注意してください。

労務管理システムのDirectHRを導入することで、労務作業を大幅に軽減できます。労務作業の効率化で悩んでいる方は、DirectHRの導入をぜひ検討してみてください。

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