労働保険の年度更新のやり方を分かりやすく解説します

人事労務担当者の皆さんは、毎年6月になると労働保険の年度更新手続きをされることと思います。都道府県労働局から労働保険の申告書類が送られて来るため、提出期限内に作成し、申告しなくてはなりません。提出する際に不備があると、再度申告しなおさなくてはならないため、注意が必要です。
この記事では年度更新の概要や手続きの流れ、気をつけるポイントなどを分かりやすく説明していきます。煩雑な手続きを理解し、大忙しのシーズンを乗り切りましょう。

1.労働保険の年度更新とは

企業が年に一度労働保険料を申告し、納付することを労働保険の年度更新といいます。見込み賃金を基に、労災保険料と雇用保険料を算出し、労働基準監督署や都道府県労働局、または金融機関などで申告・納付を行います。
保険金の給付は別々の窓口となりますが、労働保険料の徴収は原則として一体のものとして取り扱われています。

1-1.労働保険とは労災保険+雇用保険のこと

それでは労働保険がどのようなものなのかを、簡単にご説明します。
労働保険は労災保険といわれる労働者災害補償保険と雇用保険の総称で、一人でも従業員を雇用している企業は加入が義務付けられています。管轄は厚生労働省になりますが、それぞれ窓口は異なります。

・労災保険(労働者災害補償保険)
勤務中、または通勤中に従業員がケガや病気をした場合や、死亡してしまったときに、仕事ができなくなった従業員やその家族が給料を受け取れなくて困らないよう、必要となる保険金が給付される制度です。
労災保険料はすべて企業が負担しなくてはなりません。労災保険は都道府県労働局、または労働基準監督署が窓口です。

・雇用保険
従業員が失業した場合や働くことが困難なとき、または教育訓練を受けるときに、一定の給付金を受け取れる制度です。
雇用形態に関わらず、一定の条件を満たしている場合は加入しなくてはなりません。雇用保険料は従業員と企業がそれぞれ負担します。窓口は管轄の公共職業安定所になります。

1-2.労働保険料の計算~確定保険料と概算保険料

労働保険料は保険年度となる毎年4月1日から翌年の3月31日までを1年単位として、計算を行います。
従業員に支払う見込み賃金を基に賃金総額を算出し、企業ごとで定められている保険料率を乗じて労働保険料を算出します。年度更新で支払われた雇用保険料の一部は、従業員の給料から毎月徴収されます。

保険年度初頭に見込み賃金総額を基に概算保険料を算出し、労働保険料を申告・納付します。年度更新では概算保険料を年度初頭に支払うこととなります。
年度末は実際に支払った総賃金を基に確定保険料を算出し、年度更新の際に申告が必要です。前年度に前払いしておいた概算保険料を清算し、確定保険料が超過している場合は概算保険料から減算することができます。

1-3.対象となる賃金について

基本給や賞与、各種手当はもちろん、通勤交通費なども労働保険料の対象賃金となります。保険料の計算は控除前の総支給額で行わなくてはなりませんが、退職金や出張旅費、死亡弔慰金や結婚のご祝儀金などは含まれません。

2.労働保険の年度更新の流れ

労働保険の年度更新は複雑な手続きなように思えますが、基本的には送付されてきた申告書に記入して申告し、納付するだけです。また、Web上で電子申請することも可能です。
ここでは労働保険の年度更新の流れについて、ご紹介します。

2-1.年度更新に必要な手続きと必要な理由

労働保険の年度更新は毎年5月末までに申告書類が送付されてくるため、様式に則って記載します。社名や住所などの情報は既に印刷されているため、間違いがないか必ず確認してください。

年度更新はまず今年度の確定保険料を計算し、新年度の概算保険料を計算します。その後、労働基準監督署や都道府県労働局で申告と納付を行います。初年度は清算する必要はありませんが、翌年からは前払いしている概算保険料に過不足金が生じていないか、清算しなくてはなりません。

労働保険料は1年間経過しないと、正式な額を算出することができません。もし労働保険料を1年後に支払うことになると、その間に従業員がケガをしたり、失業することも考えられます。また、年度途中で倒産した場合、保険料が未納のままになってしまう恐れもあります。

こうした理由から概算を計算して前払いし、年度更新で清算することになっています。

2-2.提出する書類とその内容

労働保険の年度更新に必要な書類はどのようなものがあるのでしょう。提出書類についてご説明します。

・労働保険概算保険料申告書
対象となる年度の見込み賃金の総額を記入して申告するのが、労働保険概算保険料申告書です。見込み賃金を基に労災保険と雇用保険を算出し、申告書に記入します。
他にも雇用している従業員数や雇用保険に加入している従業員数、保険年度中に満65歳以上となる高年齢労働者数などを記入しなくてはなりません。

・確定保険料算定基礎賃金集計表
実際に支払った賃金総額を基に算出するのが確定保険料です。確定保険料算定基礎賃金集計表は確定保険料を計算するための、賃金総額の集計表となります。
雇用保険の加入条件を満たし、労災保険、雇用保険、高齢者の人数と賃金総額を集計して記入します。
申告書や集計表の作成にはとても時間がかかるため、労務管理システムを使用して電子申請している会社も多く見られます。労務管理システムは自動的に転記して集計されるため、年度更新手続きが迅速に行えます。

2-3.労働保険料の納付について

労働保険料の申告は労働基準監督署、または都道府県労働局で行えますが、保険料は金融機関で納付しなくてはなりません。電子納付も可能ですが、MPNに対応しているATM、またはネットバンキングの口座が必要となります。

3.年度更新に関して押さえるべきポイント

年度更新をスムーズに完了させるためにも、しっかりポイントを抑えて申告をしたいものです。どんな点に気をつければ良いか、簡単にご説明します。

3-1.6月1日~7月10日の間に手続きをする必要がある

労働保険の年度更新は毎年期間が決められているため、必ずその期間中に申告納付を行わなくてはなりません。
期間は毎年6月1日から7月10日までとなっていますが、この期間中に手続きできなければ政府が保険料と拠出金の額を決定し、保険料と拠出金の10パーセントの追徴金を課せられることもあるため気をつけましょう。

3-2.保険年度中に支払いが「確定」した賃金が対象

労働保険料は対象となる保険年度に支払った賃金総額で算出しなくてはなりません。社会保険料や税金は賃金の支払い日で計算すれば良いですが、労働保険料は締日で計算するため、年度末に締めた賃金が翌月払いになっていたとしても集計対象となります。

3-3.概算保険料が40万円以上であれば分納が可能

原則として労働保険料は一括納付となっていますが、下記の場合は納付を3回に分割することが可能です。

  • <労働保険料の分納が可能となるケース>
  • ・概算の労働保険料が40万円以上
  • ・労災保険・雇用保険のどちらか一方に加入している場合、概算の保険料が20万円以上
  • ・労働保険事務組合に労働保険事務を委託している

保険料の納付を分割した場合は、7月・10月・1月に支払う必要があります。

3-4.納付書の「金額」を間違った場合は訂正不可

労働保険概算・確定保険料申告書に付いている領収済通知書(納付書)の金額を間違えてしまった場合、訂正することはできません。新たな納付書に書き直す必要があるため注意しましょう。

3-5.労働保険料と合わせて「一般拠出金」を申告・納付する義務がある

石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用に充てる目的として、平成19年4月1日より一般拠出金の申告・納付が義務付けられました。一般拠出金率は業種を問わず、一律1000分の0.02です。

3-6.65歳以上の雇用保険料免除は平成31年度まで

これまで雇用保険料は65歳以上になると免除されていましたが、雇用保険法が改正されたため、平成29年1月1日から年齢の上限が撤廃されました。令和2年より65歳以上の人も雇用保険料の徴収が開始されます。
31日以上の雇用見込みがあり、週の所定労働時間が20時間以上になる場合は被保険者となるため、気をつけましょう。

4.まとめ

労働保険の年度更新について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
毎年面倒に感じている人事労務担当者も多いと思われますが、労務管理システムを活用すれば、面倒な集計や転記をする必要もなくなります。申告処理がクラウドで管理でき、電子申請も行えると、時間の短縮化や業務の効率化に役立つためおすすめです。

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