月額変更届とは|書類を提出するまでの流れや注意点を徹底解説

企業の経営者や管理職の方にとって、従業員の社会保険料に関する手続きは気になるポイントではないでしょうか。手続きにミスがあるとペナルティの対象となるため、必要書類や提出の流れについて正しく理解することが大切です。

 

当記事では、月額変更届の概要や提出が必要となるケース、書類の作成方法や注意点について解説します。月額変更届についての正しい知識を身につけ、ミスなく手続きを行いたい方は、ぜひ参考にしてください。

1.月額変更届とは

月額変更届とは、特定の条件下で従業員の報酬額が変わる際に、社会保険料を更新するために必要となる書類です。月額変更届の正式名称は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」で、提出先は日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所となっています。
社会保険料は原則として、4月から6月までに支払われた報酬の総額をもとに算定され、当年9月から翌年8月まで適用される仕組みです。

しかし、年の途中で報酬額が大幅に変更となった場合は、控除される社会保険料と実際の収入が乖離するリスクがあります。月額変更届を提出する目的は、報酬額の大幅な変更があった際に標準報酬月額を見直し、労働者の生活を守ることです。

2.月額変更届の条件|対象となるケース

年の途中で標準報酬月額を変更する手続きは、随時改定(月額変更届)と呼ばれます。
随時改定が必要となるケースは、次の条件をすべて満たした場合です。

  • ①昇給や降給によって固定賃金に変動が生じた
  • ②変動月から3か月間に支給された非固定賃金を含む報酬の平均額とこれまでの標準報酬月額に2等級以上の差が生じた
  • ③変動月から3か月間についていずれも支払い基礎日数が17日を超えた

2つ目の条件に含まれる標準報酬月額の等級は、厚生年金保険と健康保険で異なります。
厚生年金保険の標準報酬月額は、1等級の88,000円から32等級の650,000円までの区分です。たとえば、固定賃金が変動し、報酬の平均月額が200,000円(14等級)から250,000円(17等級)へ昇給した場合などは、随時改定の対象となります。

出典:日本年金機構「令和2年9月分からの厚生年金保険料額表

健康保険の標準報酬月額は、1等級の58,000円から50等級の1,390,000円までの区分です。たとえば、固定賃金が変動し、報酬の平均月額が200,000円(17等級)から230,000円(19等級)へ昇給した場合などは、随時改定の対象となります。

出典:全国健康保険協会「令和2年9月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

3つ目の条件に含まれる支払い基礎日数とは、給与の支払い対象となった勤務日数です。 給与形態が月給制・週給制の場合は暦日数、日給制・時給制の場合は実際の出勤日が対象となります。中途採用者や休職者、欠勤が多い従業員など、支払い基礎日数が少ない場合は、随時改定の対象外です。

3.月額変更届の入手から提出までの流れ

随時改定が発生し月額変更届の提出をする場合、速やかに手続きを進める必要があります。
あらかじめ月額変更届の入手から提出までの流れを把握しておくことが、スムーズな手続きをするために重要です。
ここでは、月額変更届の入手から提出までの流れについて詳しく解説します。

3-1.①月額変更届を入手する


月額変更届のデータは、日本年金機構の公式Webサイトからダウンロードすることが可能です。
月額変更届のデータ形式は、PDF版とエクセル版の2種類が用意されています。用紙に印刷して記入する場合はPDF版、パソコン上でデータを入力する場合はエクセル版のデータを入手しましょう。

3-2.②書類に必要事項を記入する

月額変更届に記入する必要事項と、記入時のポイントは次の通りです。

・被保険者整理番号
被保険者整理番号は、資格を取得したタイミングで日本年金機構から送付される「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」に記載されています。

・被保険者の氏名と生年月日
生年月日は元号と年月日を数字だけで記入しましょう。
元号を表す数字は昭和が5、平成が7、令和が9となっています。たとえば、昭和59年3月1日生まれの場合の表記は「5-590301」です。

標準報酬月額の改定年月
改定年月とは、変動後の給与を払った月から数えて4か月目にあたる年月のことです。

・個人番号(基礎年金番号)
随時改定対象者が70歳以上の場合、個人番号(基礎年金番号)を記入します。

・従前の標準報酬月額および従前改定月
記入時点の標準報酬月額を千円単位で記入しましょう。従前改定月には、従前の標準報酬月額が適用された年月を記入してください。

・昇給または降給が生じた月の支払月と区分
昇給または降給が生じた年月を記入しましょう。昇給による変動の場合は昇級、降給による変動の場合は降給に丸をつけてください。

・遡及分の支払いがあった月と支払われた遡及差額
遡及分の支払いがある場合、支払月と金額を記入しましょう。

・給与計算の基礎日数
変動後の給与を支払った月から3か月間の労働日数を記入します。

3-3.③年間平均の保険者算定を適用する場合は添付書類を用意する

平成30年10月から導入された「年間平均の保険者算定」を適用する場合は、月額変更届に加えて次の添付書類が必要です。

  • ・年間報酬の平均で算定することの申立書
  • ・保険者算定申立、標準報酬月額の比較、被保険者の同意等

随時改定用の添付書類は、日本年金機構の公式Webサイトからダウンロードできます。

ただし、年間平均の保険者算定は、次の要件をすべて満たす場合のみ適用可能です。

  • ・通常の随時改定による報酬月額と、現在の標準報酬月額に2等級以上の差がある
  • ・通常の随時改定による報酬月額と、非固定的賃金を年間平均した場合における3か月の平均報酬月額に2等級以上の差がある
  • ・現在の標準報酬月額と、年間平均した場合の報酬月額に1等級以上の差がある

3-4.④日本年金機構に書類を提出する

必要書類の作成が完了したら、日本年金機構に提出しましょう。
提出方法は次の4つから選ぶことが可能です。

  • ・電子申請
  • ・CDまたはDVDによる提出
  • ・書類の郵送
  • ・書類の窓口持参

電子申請以外の方法で提出する場合は、提出先となる管轄の年金事務所や事務センターを調べましょう。

4.月額変更届に関する2つの注意点

月額変更届の提出にあたっていくつかの注意点があり、注意すべき点を押さえられていなかった場合、内容によってはペナルティを受ける可能性があります。
ペナルティを受けないためには、事前に月額変更届に関する注意点を把握しておくことが大切です。

最後は、月額変更届に関する2つの注意点について解説します。

4-1.固定的賃金が変動した際は社会保険料の変化をチェックする

従業員の固定賃金が変動した際は社会保険料の変化をチェックし、月額変更届の提出が必要かを確認しましょう。固定賃金の変動により随時改定の対象となった場合は、可能な限り早く月額変更届を提出してください。

月額変更届の提出漏れが発覚した場合、社会保険料の差額をまとめて支払う必要があります。変動差額が数年にわたって発生していれば、年金事務所から指摘された時点で多額の出費が必要です。

予期しないタイミングで大きなコストが発生することは、経営に悪影響を与えるだけでなく、社員からの不信感にもつながります。経理担当者と経営者の連携や給与計算ソフトの機能などによって、社会保険料の変化をチェックする体制を整えましょう。

4-2.決定通知が届いた場合は被保険者の従業員にも通知する

次の決定通知が届いた場合、事業者は被保険者の従業員にも通知する義務があります。

  • ・被保険者が資格取得または喪失したことの通知
  • ・標準報酬月額の決定または改定
  • ・標準賞与額の決定
  • ・適用事業所以外の事業所が認可を受けて適用事業所となった場合
  • ・上記の適用事業所が認可を受けて適用事業所以外の事業所となった場合
  • ・適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者が認可を受けて厚生年金保険の被保険者となった場合
  • ・上記の被保険者が認可を受けて被保険者の資格を喪失した場合

出典:日本年金機構「被保険者への通知

決定通知を被保険者の社員に通知しなかった場合のペナルティは、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。ペナルティを避けるため、上記の決定通知が会社に届いたら速やかに該当従業員に通知しましょう。

5.DirectHRを使用すれば労務作業を効率化できる!

膨大で煩雑な労務作業を効率化したい方には、労務管理システム「DirectHR」がおすすめです。DirectHRでは、労働通知書を含む労務作業を大幅に軽減することができます。申請処理をクラウドで一元管理できるため、従業員はスマホやパソコンから気軽に申請可能です。

DirectHRが対応している労務関連の手続きは、入社手続きから、住所・扶養・被保険者区分などの基礎情報手続きまで多岐にわたります。そのため、離職や労災に関する公文書を電子交付することも可能です。

また、暗号通信など確かな対策が講じられており、セキュリティの面でも安心となっています。

膨大な労務作業で悩んでいる方は、労務管理システム「DirectHR」の導入をぜひ検討してみてください。

6.まとめ

月額変更届は、昇給や降給によって従業員の固定賃金が変動した場合に提出が必要となる書類です。実際の報酬と社会保険料に乖離が生じることを防ぐため、月額変更届を提出し随時改定を行う必要があります。

月額変更届の書類は、日本年金機構の公式Webサイトから入手することが可能です。月額変更届の提出漏れや、社員への通知漏れはペナルティの対象となります。

ペナルティを避け、従業員が安心して働ける職場環境を整えるためにも、随時改定の手続きは正しく行いましょう。

この記事をシェアする facebook twitter

資料をお求めの方はこちら

資料ダウンロードはこちら
無料トライアル