2020/12/16
労働基準監督署とは|権限や調査の種類・是正勧告までの流れを解説
企業が健全な経営を進める上で、労働基準監督署との関係は切っても切り離せません。
一方で、労働基準監督署がどのような役割を担っている機関なのか分からない人もいるのではないでしょうか。
労働基準監督署は立入調査や法令違反の是正勧告など、企業に対するさまざまな権限を持っています。
今回は、労働基準監督署における基礎事項や、労働基準監督署の権限・調査から是正勧告までの流れについて解説します。
経営者や人事・総務部などの人はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
[閉じる]1.労働基準監督署とは
労働基準監督署は、各都道府県の労働局が管轄している機関です。
厚生労働省の出先機関となっており、監督課・労災課・安全衛生課の3部門で構成されています。
以下は、労働基準監督署の主な役割です。
- ・企業を監督する
- ・労働者の申告、相談に対応する
- ・労災認定者に対して労災保険給付の手続きを行う
労働基準監督署は、管轄区域の企業を監督し、労働基準法を遵守しない企業があれば取り締まります。
指導しても改善が見られない企業に対しては、刑事事件として立件することが可能です。
また、労働者が企業から労働基準法違反となる扱いを受けた場合、労働基準監督署に企業の不当性を申告できます。
以下は、労働基準監督署に申告・相談できる主な内容です。
- ・未払いの給与がある
- ・不当に解雇された
- ・労災を会社に認めてもらえない
- ・36協定を超える残業を行っている
労働基準監督署は、労働者の申告内容や、国が制定した労働に関する法律に基づき、企業に対して是正勧告などの指導を実施します。
以下は、労働基準監督署における業務の根拠となる主な法律です。
- ・労働基準法
- ・労働契約法
- ・社会保険労務士法
- ・労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- ・労働安全衛生法
企業は労働者よりも立場が強くなりやすい傾向にあります。
そのため、労働基準監督署は、両者の対等な関係を守る上で重要な役割を果たします。
2.労働基準監督署の権限
労働基準監督署には、企業が法令違反をしていないかどうかを調査する「労働基準監督官」と呼ばれる専門職員が在籍しています。
以下は、労働基準監督官が持つ主な権限です。
- ・企業への立入調査
- ・法令違反への指導勧告
- ・法令違反者の逮捕
労働基準監督官は、企業に対して事前の通達をせずに立入調査を行い、労働者への質問や帳簿類のチェックを行うことが可能です。
調査の結果、問題があると判断された場合は、経営者に対して指導勧告を行うことができます。
また、労働基準監督官は「特別司法警察職員」としての権限も有します。
法令違反が判明した際や、指摘事項に対する改善が見られない際には、刑事事件として経営者の逮捕が可能です。
2-1.労働基準監督署による調査の種類
労働基準監督署による調査は複数あるため、企業の経営者は具体的な調査内容を理解した上で、健全な労務管理を行うことが大切です。
以下は、労働基準監督署による4つの調査です。
・定期監督
- 事前に定めた監督計画に基づいて、定期的に企業を調査します。
・申告監督
- 労働者の申告をきっかけとして実施する調査です。
労働基準監督署は、労働者から不当解雇・未払い賃金などの相談を受けると、相談内容の事実確認のために対象の企業を調査します。企業が労働基準法に違反していた場合、労働基準監督署は企業に対して行政指導を行います。
・災害時監督
- 労働者から労災申請があった際に行う、原因を特定したり再発防止策を立てたりするための調査です。
・再監督
- 前述の3つの調査において、指導した点が正されているかを確認するための再調査です。是正報告書が未提出である場合や、報告内容に虚偽・問題点が見つかった場合に実施します。
上記の調査は、法律上の権限に基づいて行われるため、調査の拒否はできません。
企業は、申告監督や災害時監督などが起きないよう、健全な経営を行いましょう。
3.労働基準監督署と他機関との違い
労働基準監督署以外にも、労働環境を整備する機関が多数あります。
以下は、労働基準監督署と業務内容が似ている主な機関です。
・都道府県労働局
- 都道府県労働局は、厚生労働省が管轄する組織のひとつで、各都道府県に配置されています。
労働基準監督署よりも上層に位置する組織で、労働関係法令に則って助言・斡旋を行うなど、労働者の環境を改善するための業務を担います。
労働基準監督署は、労働基準法違反などの法令違反に基づき対処を行うことが可能ですが、都道府県労働局には違反を取り締まる権限がありません。
・労働基準局
- 労働基準局は、都道府県労働局や労働基準監督署を監督する上部組織で、厚生労働省内にある機関です。
都道府県労働局や労働基準監督署を適正に機能させるための機関であるため、基本的に、労働者からの相談を直接受けることはありません。
・総合労働相談コーナー
- 総合労働相談コーナーは、労働基準監督署や都道府県労働局に設置されています。
労働者の相談内容に応じて、適切な行政機関を紹介したり、助言を行ったりしています。
以上から、企業が対応する可能性のある機関は、労働基準監督署や都道府県労働局が多いと言えます。
4.労働基準監督署が行う調査と是正勧告の流れ
企業を経営する上で、定期監督などの調査が行われる可能性は少なからずあります。
以下では、労働基準監督署が行う調査から是正勧告までの流れを紹介するため、ぜひ参考にしてください。
①労働基準監督署からの連絡・来訪 |
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立入調査は、事前に連絡が来る場合もあれば、労働基準監督官が抜き打ちで訪ねる場合もあります。 以下は、調査の際に必要となることが多い主な書類と、調査事項です。 |
主な必要書類 |
・就業規則や給与規定などの規則を記した書類 ・労働条件通知書や雇用契約書の控え ・従業員名簿 ・健康診断の結果 ・従業員の労働時間が記された月報や直近6ヶ月間のタイムカード ・直近6ヶ月間の賃金台帳 ・時間外労働・休日労働の協定届※50名以上の従業員がいる場合は、以下の書類も必要とされる傾向にあります ・安全衛生管理体制の組織表 ・安全衛生委員会の議事録 ・管理者・衛生管理者・産業医の選任報告書のコピー ・ストレスチェックの実施記録 ・産業医による長時間労働者を対象とした面談指導の記録 |
主な事前調査事項 |
・事務所全体の従業員数と18歳未満の従業員数(男女別) ・企業全体の従業員数 ・パートとアルバイトの人数 ・外国人従業員の人数と在留資格の種別 ・障害を持つ従業員の人数と従事する業務内容 ・最も給与が低い従業員の給与額 |
↓
②労働基準監督官による立入調査 | |
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事前に準備した書類などに基づいて、立入調査が行われます。 以下は、労働基準監督官が調査する主な内容です。 |
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労働基準監督官が調査する主な内容 | |
残業管理 | 割増賃金を支払っているか・36協定違反でないか |
労働条件 | 従業員に書面で通知されているか |
健康診断 | 1年に1回行われているか |
安全衛生管理体制 | 作業環境が劣悪でないか |
↓
③是正勧告書・指導票の交付 |
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立入調査によって法令違反が発覚した場合、「是正勧告書」が交付されます。 企業は、是正内容に基づいて違反事項を改善しなければなりません。 改善対象となる具体的な内容は「指導票」に記載されます。 |
↓
④是正報告書の提出 |
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交付された是正勧告書と指導票に従って該当部分を是正し、労働基準監督署に是正報告書を提出します。 提出期限に遅れると、再監督を受ける恐れがあるため注意が必要です。また、是正勧告を無視し続けた場合、経営者が逮捕される恐れもあります。 適切に改善した上で、期限までに必ず是正報告書を提出しましょう。 |
労働基準監督署の調査が入る場合は、指示された書類を準備し、是正勧告には適切に対応を行いましょう。
5.まとめ
各都道府県の労働局が管轄している労働基準監督署は、企業を監督する機関であり、労働者の申告先や相談先でもあります。
立入調査で法令違反が見つかった場合、是正勧告書に基づき、指摘箇所を速やかに改善しましょう。
是正勧告や改善指導には強制力があるため、放置すると再監督だけでなく、経営者の逮捕につながる恐れがあります。
ここまで紹介したことを参考に、日頃から法律を遵守した健全な労働環境を整えるように心がけることが大切です。
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