先生の事務所についてお聞かせください。
後藤先生:得意とする業務内容は広義の労務管理です。「コンプライアンス」をベースに、「働きやすさ」「働きがい」といったプラスアルファを乗せてクライアントに提案します。労務管理を中心に担当部門がクライアントをマネジメントし、オペレーション部門が手続きを、業務部門が給与計算を行い、管理部門が全体的なとりまとめをする体制で約500社を受託しています。
中小企業の労務問題は複雑化しており、企業ごとにその問題も異なるため、当事務所で蓄積したノウハウをもとに提案を行います。
また、手続き、給与計算など受託した業務のデータを、労務管理に活かすことも行っています。
■『社労夢』のデータを分析
気付かない問題点を顕在化する!
業務のデータを活かすというのはどのようなことでしょうか。
後藤先生:例えば得喪手続きで、辞める方が多い事業所については、何か労務管理上の問題が生じているかもしれません。傷病手当金の傷病名や労災書類の申請でその事業所の労災等の傾向もわかります。給与計算では「労働時間が長い」「欠勤が多い」というデータから情報収集を行うこともあります。
労務管理のうえで、課題にクライアントが気付いていることはごく一部で、気付いていないことが沢山あります。社労士診断認証制度(全国社会保険労務士会連合会)の経営労務診断を活用して見える化し、課題を年間計画に落とし込みます。診断をすることと、診断に現れない日常の動きから問題点を探ること、この二本柱を気付きのきっかけとしています。
また、当事務所は現場主義なので、普段から訪問を基本としてクライアントの職場環境や雰囲気を感じ、労災が起これば工場へ行く、といったことを重要視しています。労災の事案から傾向を分析し、データを取りまとめてクライアントに伝えます。その気付きから対策を依頼されることもありますが、依頼につながらなくても問題を提起することで当事務所の価値を感じていただけます。そのような積み重ねがクライアントとの信頼関係の醸成に繋がります。
『社労夢』の導入はいつですか。
後藤先生:2001年4月に開業し22年になりますが、事務所勤務時代に使っていたこともあり、早いうちに『社労夢』のパッケージ版を導入しました。その後『社労夢ハウス』が始まったときに導入して現在に至ります。
『社労夢ハウス』は顧問先とつながる「ネットde顧問」を最大限に活用できます。『ネットde就業』や『ネットde賃金』を貸し出すなど様々に使い方が広がり、『社労夢ハウス』に切り替えて良かったと思っています。
『ネットde顧問』の活用状況をお聞かせください。
後藤先生:『ネットde受付』でクライアントのデータを取り込むことで業務効率化できるので、新しいクライアントには積極的に『ネットde受付』を提案しています。
クライアントもデータを入れるだけではなく、台帳を閲覧することができます。以前は保険料の一覧表が欲しいといった問い合わせも多かったのですが、クライアントの画面からすぐに見ることができます。
また、総務の方が辞めるときに次の担当者が育っていないケースが結構多いのですが、『ネットde顧問』があると、知識のない新人向けに、当事務所でシステムを使えるようにサポートしています。
『ネットde明細』は、紙の明細の送付作業を省略できるので、複数支店があるような企業には積極的に勧めています。近年少しずつ引き合いが増えています。
クライアントとしても選択の幅が広がりますね。具体的な『ネットde顧問』の導入事例を教えてください。
■『ネットde顧問』を活用!大企業から中小企業まで規模に合わせたサービスを提案!
山上様:大企業の事例では、グループ企業も合わせて約1万人のクライアントに導入いただいています。ひと月の入退社も数百件と非常に多いのですが、『ネットde受付』を活用して処理しています。複数人の総務担当者が全国に点在されていますが、方々から同時に手続きの依頼を受ける場合でも対応できるのが便利です。また、手続の進捗や台帳の画面を見ていただきながら気になる点を会話することも可能です。
後藤先生:新しく開業した方や10人未満の小規模企業では、総務専属の担当者がいないことも多く、『ネットde受付』に打ち込んでもらったら当事務所で処理するパターンで対応しています。
また、小規模の企業では給与計算担当者が一人で、病気や突然の退職もあります。『ネットde賃金』なら担当者が急に辞めても、新しい方が入るまで当事務所で引継いで、いずれ元に戻すということもでき、安心してご利用いただけます。
人員不在を想定したBCP(事業継続計画)に即したツールということですね。
『社労夢』の周辺アプリケーションはお使いですか。
後藤先生:『eNEN』(年末調整データ収集)と『MYNABOX』(マイナンバー保管・管理)を使っています。『eNEN』は3年前くらいに導入し、最初の年こそ大変でしたが、2年目からはすごく楽になりました。
山上様:紙より、はるかに処理が速くなりました。今まで送られてきた資料を1枚ずつ確認して入力する作業がありましたが、『eNEN』を利用すると本人がデータ入力を行うと同時に内容確認ができ、入力作業も省略できます。
今は紙の対応と、データの対応が混在していますが、概ねデータに移行できれば、かなり工数削減できると思います。
事務所の目指す方向性を教えてください。
後藤先生:『社労夢』のデータを分析する人を育成して、蓄積したデータを読み取り活用する準備をしています。それを最初にお伝えした「労務管理」に活かせるようにしたいです。それに加えて労務監査や職場のパトロールなど、アナログ的な土台部分をしっかりとやっていきたいです。
これから「コンプライアンス」や「働きがい」がますます大事になると考えています。色々な意味で魅力ある職場にしないと労務管理どころではなく、企業が立ち行かなくなります。その魅力を伝えるのに労働CSR※のスキームは適しており、活用していきたいと思っています。そうして企業価値を高め、発信することがこれからの社労士に求められるのではないでしょうか。
※労働CSR(労働分野において企業が責任ある行動をとることや説明責任を果たすこと)
その中で『社労夢』に求めることはありますか。
後藤先生:手続きや給与計算などを、いかに効率良くできるかを更に追求したシステムになってほしいです。また集まったデータの加工や分析ができるような機能が欲しいです。あとはクライアントのカルテのようなものを書きこめるようになれば当事務所が力を入れている労務管理に近づくと感じています。
取材:2023年2月