先生の事務所についてお聞かせください。
工藤先生:手続、相談業務、1、2号業務を主として行っています。3号業務は意識せずに、1、2号業務でお客様とやり取りしながら、提案事項や要望に対して、できることを一緒に考えます。そうする中で、お客様や他士業からの紹介、セミナー講師で関係を持った方とのつながりなどからお客様が増えています。
大分県と福岡県に事務所があるのですね。
工藤先生:地域ごとに担当がいますが、『社労夢』などクラウドサービスを活用しながら、状況に応じて地域を超えて助け合うこともしています。また、長崎、佐賀、山口などにもお客様がいますが、遠方のお客様には『ネットde顧問』シリーズを活用いただいています。
クラウドの『社労夢』ならではの活用ですね。
工藤先生:ほかの活用としては、福岡の女性スタッフが出産後も里帰りをしたまま働きたいという希望があがり、クラウドの『社労夢』を使うことで在宅勤務が実現できました。社内サーバーにもアクセスでき、携帯電話で担当するお客様とやり取りができるので全く問題ありませんでした。
対面して話をすること以外は、場所を選ばずに業務が行えます。だからこそ、対面して話す時間を大切にしたいと考えました。事務所に戻らないと事務処理ができないという状態をまず解消しようと考え、大分の事務所にシステムに強いスタッフを置き、他のスタッフやお客様から飛んできたデータはすべて大分事務所のスタッフが処理する体制を構築しました。担当者はデータ処理の時間を節約できるようになり、節約した時間でパソコンを持ってお客様のところに行き、その場で事務処理をして直帰できるようにしました。今は外でお客様と話をしながら、お困りごとを聞き出して寄り添うことに時間を割いていく方向性です。
『社労夢』を導入したのはいつ頃ですか。
工藤先生:20年ほど前、大分で三つの事務所を合併して社労士法人を立ち上げましたが、その時メインの先生が使っていたのが『社労夢』でした。それを今も使っています。
2016年に今のウインツを立ち上げた時に、フルに『社労夢』を使い倒そうと方針を定め、その1〜2年後に『社労夢ハウス』を導入しました。お客様からデータを入力してもらい、そのデータを活用するという『社労夢』を真ん中に置いた運用を目指しました。
■段階的な『ネットde顧問(受付)』の案内により、お客様への負荷なく導入を実現!
お客様からのデータの入り口として、『ネットde顧問』はどのようにご案内していますか。
工藤先生:お客様のリテラシーや環境によるところもありますが、最初は電話、ファクス、郵送といったアナログ的なやり取りから始めます。『ネットde顧問』をご案内するにも、いきなり画面を見せて「ここを入れてくださいね」と言うと、「なんか大変そう」となります。まずは必要項目を書いたFAXでやり取りする。それに慣れたらツールを『ネットde受付』に置き換えます。すると、「手で書いていたものをここに入れればいいのね」となり、お客様の負担も少なく切り替えが進み、同時に格段に処理効率が上がります。
■データの整備により、残業ゼロを実現!『社労夢』の未来を見据えて、さらなる整備を行う。
工藤先生:処理に必要なデータを取得することが大切なので、お客様が従業員情報を別のシステムに入力していたら、それをCSVでもらい、スタッフが加工して『社労夢』に取り込むこともしています。
CSVでのデータ取り込みも行っているのですね。
工藤先生:昔、15日締25日払、250人位の介護事業所の給与計算を、勤怠データの確認と入力作業で、丸2日位かけて『社労夢』に手入力していました。それを『社労夢』に直接データ取り込みするようにしたところ、今では勤怠データの確認とデータ取込後の確認を含めて、3〜4時間位で処理できるようになっています。
また、給与計算はすべて『社労夢給与』で行っていますが、給与計算をしていないお客様は定期的に賃金台帳を提出していただき、社労夢の従業員台帳管理(賃金データ入力)に取り込み、月変の確認をしています。
現在はそれをさらに『社労夢給与』に取り込む運用に切り替えている最中です。このやり方はまだ10社位ですが、社労夢給与の支給項目の設定まで行えばお客様から給与計算結果のデータをもらって入れ込むことができます。来年にかけて、全社対応しようとしています。
賃金データが入れば、月変の確認から、離職票や育休や高年齢まで、賃金ベースの業務が、タイムリーに行えます。年度更新も算定もすでに入っている賃金データから自動配置で集計し、その時期に躍起になって長時間の作業をすることもありません。だから、事務所では休日出勤もなければ、残業もゼロで回っています。
システムを活用するうえで、必要なデータを取得するということは非常に大切ですね。
工藤先生:そうですね。データの整備も力を入れています。『社労夢』の従業員の項目の全部を埋めなくとも、得喪の電子申請手続は可能です。しかし、別の手続や年更・算定で、チェックが入っていないからデータを拾わないということがあります。そこで、従業員のデータを定期的にメンテナンスします。するとどんな場面でもデータを有効に使えるようになるので、時間をかける価値はありますよね。申請の元となるデータをきれいに保つことは、最も大事な仕事のうちの一つだと思います。『社労夢』は必要だからいろいろな項目が設定されていのでしょうから、すべての項目を埋めることが基本的な考え方じゃないでしょうか。
僕らはまだ『社労夢』のポテンシャルを、3〜4割位しか使えていないのかなと思います。これを、7〜8割使えるようになった時に振り返ると、「今まで何をやっていたんだろう」となるのでしょうね。
この先、デジタルデータの活用は、自分たちが想像もつかないような、すごいことになるかと思います。それはエムケイシステムさんに頑張ってもらうとして、そうなったときにデータがきれいに整備されていれば、いち早く恩恵にあずかれますよね。
これから事務所をどのような形で展開していきたいとお考えでしょうか。
工藤先生:IT化が進み、この先どうなるかは正直分かりません。ただ、事務所の理念が「いい人と思われたい」というもので、要は「よかったよ」「助かったよ」と言ってもらえる仕事をしたいというイメージです。お客様本位に「何をしなきゃいけないの?」と考えることが基礎にあります。
システムへの不安や疑問に応える役割は、IT化が進むほど強く求められると思います。お客様の気持ちに寄り添いながら、できることを考えて意識や行動を沿わせていく。時代が変わっても相手は人間なので、人の専門家としてお客様のより近くで距離を縮めていくことが、これから先も必要と考えています。
取材:2023年4月